しとしとと雨が降り、りんごの葉や木々を濡らす梅雨の時期でも、私たち生産者は毎日欠かさずりんご園に出かけます。 りんごの木をはじめ、植物にとって今の時期の雨はまさに天の恵み。 空から降り注ぐ雨は大地の隅々にまで水分を送り、植物に力を与えてくれます。 ところで梅雨空の下に広がる6月のりんご園では、脚立に上って作業をしている人をよく見かけます。何をしているのでしょうか? 5月初旬から咲き始めたりんごの花が散ると、そこに小さな実が結ばれています。 りんごの場合、花の根元にある「果たく」という部分が成長し果実となるため、計算上は花の数だけ実を結ぶことになります。 しかし、無数に咲き誇った花の数と同じだけ結実してしまうと、あまりにも実が多すぎて木に負担がかかっていまいます。 自然界とはよく考えられているもので、木を守るためにも受粉が成功しても実を結ばない花をつくります。 そういった未結実を「カラマツ」と呼んでいますが、カラマツによって減少てもなお、果実が多すぎる場合がほとんどです。そのため、りんごの木自らが枝になった多くの実を落としてしまいます。 6月にこの現象が見られるため「6月落果」と呼ばれています。 この6月落果により、かなりの数の果実が自然に減少することになりますが、美味しいりんごを育てるためには、人の手でさらに選別しなくてはなりません。 選別の方法は、枝になったりんごの実をひとつひとつ手にとり、変型したものや霜にあたったもの、傷ついたものなどを落としていくという作業で「実すぐり」と呼ばれています。 実すぐりは、無数にあるりんごの木を相手に、一日中、脚立に上ったり降りたりしながら行うため、労力と根気を必要とする大変な作業です。 しかし、この作業を怠ると、栄養が分散してしまって大きさが不揃いになったり、甘くないなどの悪い品質のりんごに育ってしまいます。 また、多すぎる果実は木を疲労させるため、来年度の生産にも悪影響を及ぼします。 ちなみに、実すぐりは一本の木につき、2〜3回に分けて行い、最終的に咲いた花の数の10分の一まで実の数を減らします。 ゴールド農園から出荷するりんごたちは、15分の1という厳しい関門をくぐり抜けて市場に届けられるわけですから、まさに少数精鋭、エリート中のエリートと言ったところでしょうか。 りんごの美味しさはこうした苦労によって生み出されているのです。 |