10月はわたしたちゴールド農園にとって、もっとも忙しい季節です。 9月の時点では収穫できるりんごは主に「つがる」だけでしたが、10月に入ると「千秋」、「ジョナゴールド」、「むつ」と何種類ものりんごが次々と収穫の時期を迎えます。 今、農業も機械化の時代にあります。 たとえば北海道で栽培されているジャガイモの場合、種芋を植えるところから、収穫まですべて機械で行うことができます。 農業の担い手が減りつつある現在の状況では、農業の機械化は好都合なのかもしれません。 しかし、りんごは機械では育てることができない作物です。 枝の形、実のなり方、葉っぱの付き方、木一本一本に特徴があるため、柔軟な対応ができる人間の手がどうしても必要になってきます。 ことに収穫作業においては、りんごの知識と経験を持った人にしかできないデリケートな作業です。 今月は、その収穫の方法をお伝えいたしましょう。まず、りんごの栽培方法には無袋と有袋という2つの方法があります。 「無袋」とは文字通り、袋をかけずに栽培するもので、消費者の皆様には「サン○○○」の表記の方が馴染み深いかもしれません。 「サン」とはもちろん「太陽」のことで、袋をかけずに太陽の光をいっぱいにあびって育ったという意味が込められています。 ちなみに、わたしたちゴールド農園の自慢である「葉とらずりんご」はもちろん無袋による栽培です。 一方、有袋とはりんごの実が小さな段階から袋をかけて栽培する方法です。 袋をかけ、りんごの実を保護することで、枝ズレによる傷や虫などの害を防ぐことができます。 また、着色を均等にするという効果もあります。 りんごは、秋になり気温が下がってから太陽光を十分に浴びることによって、色付きを鮮やかにします。 そのため、有袋りんごも最終的には袋を外し、太陽光を浴びさせるわけですが、そのタイミングを人為的に行うことで色付き具合をコントロールするのです(たとえば「有袋むつ」の場合、三重の袋を一枚づつはがすことで、桃を思わせるあの独特の色合いを作っています)。 同じ品種のりんごでも、無袋のりんごが濃い赤に色付くのに対し、有袋のりんごの色が淡く明るい赤になるのはそのためなのです。 これまでは、有袋りんごのこうした色合いが好まれる傾向にありましたが、最近は無袋が注目されています。 その理由はやはり味にあります。太陽の光をじっくりと浴びて、甘さを増した無袋のりんごと有袋のりんごでは、その美味しさに大きな差が出ます。 こっそりと皆様にお教えしますが、わたしたちりんご農家が口にするりんごは、いつだって無袋りんごです。 傷がついていたり、着色にムラがあったとしてもやっぱり無袋栽培で育てたりんごの方が断然、美味しいですよ。 さて、実際の収穫作業についてですが、実をもぎ取る前に行う作業がいくつかあります。 まず行われるのが「葉つみ」です。大きく育った実の周囲を覆う葉をつみとるこの作業は、りんごにたっぷりの太陽を浴びさせ、色ムラがなくまんべんに色付かせるのが目的です。 とくに短い時間で着色させる有袋りんごには欠かせない作業です。 葉つみをした次に行われるのが、「つるまわし」です。これも色付きをよくするための作業で、りんごの実を静かに回転させて、日陰になった部分を太陽がよく当たる方向へと向けてあげます。 この作業はなかなか大変です。脚立に上ったり降りたりして一個づつりんごを回転します。 しかも、ただ回転すればよいだけではありません。 実の付き方次第では、回転させても手を離せば再びぐるんと同じ向きに戻ってしまうりんごもあります。 そこで登場するのが輪ゴムです。 輪ゴムを使って、枝とりんごを固定して、動かないようにするわけです。 「葉とらずりんご」はいわば自然児なので、こうした作業を行わずに収穫することができますが、一般のりんごは、これらの地味な作業をひとつひとつこなしていくことではじめて収穫の日を迎えるのです。 また、収穫作業についても、ただ、りんごを摘み取るわけではありません。 熟し具合をみながら一個一個摘み取り、かごに入れてから、それらを1箇所に集め、そこからさらに傷の有無、大きさなどをチェックしながら一個づつ選別し、ケースに詰めるという作業を延々と繰り返します。しかも、岩木山の麓に広がるゴールド農園には傾斜地も多数あり、そういった場所では、脚立の上がり降りや運搬などの作業も実に困難です。 それでもやはりわたしたちりんご農家にとって、一年の集大成である収穫の季節は何ものにも代えがたい喜びの瞬間です。 脚立の上でりんごを摘む人とその下でりんごを運ぶ人の間では冗談が飛び交い、ケース詰め作業に追われる人の口元にも笑顔がいっぱいです。 ゴールド農園にはその道50年というりんご作りの大ベテランもいます。 50年というと実に半世紀。途方もない時間と言えるでしょう。 しかし、どんなベテランでも収穫の時期はいつだって新鮮です。 りんごはいくら大切に世話をしてもらっても実を結ぶのは一年に一度きりです。 半世紀の間りんごを作り続けてきた大ベテランも、考え方によっては50回しかりんごを収穫していないのです。 農業の難しさ、そして楽しさはこの自然のサイクルにあります。 秋が深まり、色付き、甘さも最高になってきました。岩木山の麓ですくすくと育ったゴールド農園自慢のりんごたちをぜひお召し上がりください。 |